成田空港を離陸する、アントノフ124型ルスラーンがスタンバイしていました。
Volga-Dnepr AirlinesのAn-124 (RA-82079)です。
超大型貨物機であるAn124型は通常の航空機の離陸と違って、航空ファンなどでは離陸の一連の準備は「儀式」と呼ばれているようです。
その様子が撮影できましたのでお伝えしたいと思います。
アントノフAN-124型 ルスラーン
量産された貨物機としては、世界最大の貨物機です。
A380よりも少しずつ大きいサイズ感です。
56機が製造されました。
運航の乗員は6名もかかります。
操縦士2名、航空機関士2名、航法士1名、通信士1名必要で、
アナログのメーターが多かったりして設計は古いのですが、
なんと150tもの荷物を運べる唯一無二の機体で、
世界各地の空港にチャーター機として多くの貨物を運んでいます。
ちなみに「ルスラーン」とは昔話の主人公である騎士の名
中部国際空港などには飛来回数は多いのですが、
このようにたまに成田にもきてくれます。
この期待も2ヶ月前に中部国際空港にきていたようです。
大きいだけでしたら、同じアントノフの
AN225ムリーヤという機体がさらに大きく、250tもの貨物を運べ、
なんと片方の翼に3つエンジンがついている機体もありますが、1機しか生産されていません。
大きさを比較すると、
機種 | 全長(m) | 全幅(m) |
An-124 | 68.9 | 73.3 |
An-225 | 84.0 | 88.7 |
B747-8 | 76.3 | 68.5 |
A380 | 73.0 | 79.8 |
B747 やA380とは同じくらいのサイズ感ですが、An225は大きさが二回りくらい大きいことがわかります。
An-124の離陸前出発準備、「儀式」とは
通常の航空機ですと、完成等から離陸許可が出たら、滑走路に入ってすぐに離陸滑走を開始します。
ところが、An-124 ルスラーンは滑走路に入って停止してから、離陸のためのチェックが複数あり、それをこなしてからの離陸滑走となるので、非常に出発準備がかかるのですね。
手順としては、停止したままエンジンをフルパワーにして、出力を安定させます。
その後フラップを下げて、最大で安定させた出力を維持しながら、離陸していくという順番なんです。
滑走路に入ってから5分近くかかる場合もあります。
これだけ時間がかかりますので、出発便は後ろもつかえてしまいますし、着陸してくる飛行機のタイミングや間隔も図らなくてはいけません。
なので航空管制官泣かせかもしれません。
通常成田空港ではあまり混まない時間帯に、運用が予定されたりするようですが、なかなかうまくいかないことが多いようです。
混雑する時間帯に離陸が重なると、誘導路に10機近い離陸待ちの航空機が並んでしまったりします。
この日は夕方の4時くらいで、通常でしたら到着のピークが終わりかけですが、出発のピークが始まる少し前といったところでしょうか。
当日は到着機はあまりなく、間隔もとても開いていて、後続機の春秋航空機はまだ茨城県稲敷市くらいを飛行しておりました。
是非動画でもご覧ください。
停止したままエンジン出力が上がっているので、機体後部など水平尾翼がすごく揺れます。
そして、フラップが降りてきます。
エンジン出力が上がり、滑走路脇の草が半端なく揺れていたので、かなりのジェットブラスト(後方気流)が発生しているのが分かります。
セントマーチンで見てみたい
このような後方気流をみていると、滑走路の長さなどの運航制約上実際に行くことはなさそうという前提ですが、見てみたい空港があります。
セントマーチンというカリブ海の空港はご存知ですか。
プリンセスジュリアナ空港(SXM)という空港です。
ビーチのすぐそばに滑走路の端がある空港ですが、ビーチから航空機の後方気流を浴びながら離陸の航空機を見送るとく日常がそこにはあります。
私も何回か行ったことのある大好きな空港です。
そんな滑走路端が目の前にあり、滑走路目一杯使って離陸するのに、端のギリギリにスタンバイして、あの後方気流を数分浴びながら離陸して行ったら・・・。
ビーチで観光客の方がどれくらい耐えられるかとても気になります。
ただし、離陸に必要な滑走路の長さが200m程足りないようで、現実にはなりません。
実際、KLMオランダ航空のB747-400 やエールフランス航空A340-300などのエンジン4発機は、離陸するまでの30秒くらいの瞬間的な風圧も凄かったですが、An-124のその風を数分間耐えるというのはかなり難しそうで、みんな海に飛ばされ、さらにビーチの砂も半分くらいなくなってしまいそうですね。
エンジンフルパワーに耐える主脚
この後方気流の中ブレーキをかけて踏ん張っているのが、
動体直結といって良いほど短い主脚、ランディングギアについたタイヤですが、
5個が2列、これが左右で、20個のタイヤで
この風圧にブレーキをかけています。
An-225型は
7個が2列、これが左右で、28個のタイヤを持ちます。
これだけ主脚が短いと、着陸時の感覚的には、動体着陸するような地面との近さを感じるかもしれませんね。
そんな、An124型はようやく動き出して、長い離陸滑走ののち、やっと浮いたと思ったら、悪天候で霞んで見える程度でしたが、ベイパーを発生しながら浮き上がりすぐに消えてしまいました。
この後、An-124 RA-82079は約7時間かけて、アンカレッジまで飛行しました。
また天気の良い時にその雄大な姿を見せて欲しいものです。